稲城駅徒歩10分。駅近里山がつなぐ地域の輪
■「大好きな山のお手入れがしたい!」から生まれた里山活動
新宿駅から京王線で30分ほどの稲城駅。ここから徒歩10分の場所に、地域の方が大切にしている里山「南山」があります。 山に入ってすぐの畑では、子ども達が農作業をしていました。 赤ちゃんを背負ったお母さんは木陰に腰かけて涼みます。 老若男女が汗を流して雑木林の木を切ります。南山は、初めて足を踏み入れた人でも、どこかなつかしさを感じられるあたたかい里山です。
南山では、土地区画整理事業による開発が進んでいます。 開発が持ち上がった当時、開発に賛成か反対かで地権者の意見が分かれたと言います。 南山を大切にしたい地域住民の間では、開発に反対する運動もおきました。 そんなとき生まれた市民団体が、『南ちゃんの会』です。 設立時に会長を務めた和田さんは、「開発に賛成とか反対とかよりも、私たちはとにかく大好きな山のお手入れがしたいんだ!」と、仲間数人と南ちゃんの会を立ち上げ、南山の地権者の許可を得て2008年から雑木林の下草刈りを始めました。この場所は、後に「桜の広場」と名付けられました。
■長期活動をめざして「一の森」を購入
南ちゃんの会は、その後法人格を取得し、2014年から正式名称が「NPO法人里山プロジェクトみなみ」になりました(通称 南ちゃんの会)。 数名からスタートしたメンバーは、今では35名。活動は毎週第1、第3日曜日に行います。 主な活動拠点は2か所。 1つ目は、活動の原点となった雑木林「桜の広場」。地権者の許可を得てお手入れを続けています。 桜の広場には会員手作りの椅子やテーブルが置かれ、作業日にはここでお昼ごはんを食べながらわいわいおしゃべりをします。桜の広場は月に一度地域に解放され、音楽会などが開催されます。 2つ目は、会員が費用を出し合い、2011年に会として購入した南山の土地「一の森」。 「一の森」という名前には、「二の森」「三の森」と数を増やしていきたいという願いが込められています。 購入当初は鬱蒼としていた山は、会員のお手入れによって生まれ変わり、今では心地よい光が降り注ぐ見晴らしの良い森となりました。天気がいい日には富士山も見えるとのこと! 一の森を購入したことで、数十年先を見据えた長期的な活動計画が立てられるようになりました。また、自分たちの土地への愛着が生まれ、南山への想いも強くなったと言います。
■南山から広がる地域の輪
南ちゃんの会の活動は南山のお手入れにとどまりません。 開発後の新しい街に植えるための苗木を育てるなど、南山周辺の街作りにまで広がっています。また、他の団体と連携して、南山を軸にした地域のつながりを生みだす活動も始まっています。 2014年5月には、南山を愛する地域の若者や南山で活動する複数の団体が協力し、南山を会場とした「稲城森フェス」が開催されました。
音楽と南山を楽しむイベントで、当日の南山はフラッグやハンモックでおしゃれに飾られ、森の中にはライブ音楽があふれました。 目標来場者300人に対し、当日は800人以上の方が南山を訪れ、このイベントがきっかけで初めて南山に来た方もたくさんいたそうです。 南山は人と人とをつなぐ拠点になろうとしています。 南山を愛する気持ちから出発し、活動の場をどんどん広げる南ちゃんの会と南山の今後が楽しみです♪
※『NPO法人里山プロジェクトみなみ(通称 南ちゃんの会)』は2011~2013年度「東京の緑を守ろうプロジェクト」の助成団体です。