緑とともにある暮らしを考えるセミナー

「緑とともにある暮らし」に関するトークショーのあと、参加者と共にワールドカフェを行いました。

【ファシリテーター】
鈴木菜央(greenz.jp 発行人、株式会社ビオピオ 代表取締役)

ゲストスピーカー
岩崎雅美(東京キャンプ 代表、丸の内朝大学「ピクニックプロデューサークラス」講師)
柿原優紀(H.O.W 共同代表、編集者)
小野裕之(greenz.jp 副編集長)

◆話題提供:「緑とともにある暮らし」
鈴木氏:

greenz.jpでは「あなたの暮らしと世界を変える グッドアイデア」を紹介するウェブサイト、全国60ヶ所で開催しているエコをテーマにした飲み会「green drinks」、自ら主役となって形にしていく「これからの学校」「green school」を運営しています。

一昨年、自分の生き方や暮らし方を見直し、自然と触れ合える千葉県いすみ市へ引っ越しました。近くには農的な暮らしをしながら世界中からのウーファー(オーガニックファームで仕事や家事を手伝う代わりに、食事と寝る場所を与えてもらう人)を受け入れているブラウンズフィールズという場所もあります。

私の専門は「持続可能性」ですが、地球が直径1mだとすると地表は1ミリぐらい。リンゴの皮と本体のような関係です。この薄いところに緑があり、私達も暮らしています。そこで収穫した命をいただき、廃棄したものがその中で循環し、再び自分たちに帰ってきます。このような地球の中で1人1人が宇宙船地球号の乗組員のような意識で、自分が主役であり、社会や地球に対して責任をとり、何をしていくのかを考えていかなければならないのです。

最近では様々な研究が進み、1人の人間の行動がシステム全体にどれほど大きな影響を与えるのかがわかってきました。1人の人間は決して無力ではなく、むしろ地球全体や社会に対して影響を与えずには存在できない、ということが実証されています。今日は皆さんがここで出会ったことや面白いことを考えながら話し合うことも、必ず何かにつながると思うと、とても楽しみです。

◆鈴木氏とゲストを交えてのトークショー
小野氏:

「緑とともにある暮らし」を考えた時、松戸のある町内会長宅の前の植栽に花が植えてあったことを思い出しました。そこは公共のスペースでありながら誰からも咎められず、むしろ歓迎されています。これこそが緑との関わり方のヒントになるのではと思いました。今日はパブリックスペースを再定義するような事例をグリーンズからいくつかご紹介します。

  • 道路や駐車場に2畳分くらいの芝生をひき、そこを「公園」と呼んでしまう「park day」。
  • 公園で皮膚がんの危険を訴えたり、表現の場として公園を使う「ゲリラパーク」。
  • 公園を図書館として使う。
  • キューバでは、緑が少ない地域の歩道や車道のアスファルトを剥がし、ゲリラガーデニングといって野菜の種を植えて育てたりしている。今は世界へ広がっている。
  • 麻布十番にある農園つきシェアハウス。都心では土地が余るとたいてい駐車場にしてしまうが、そこを農園にしてしまった。
  • ブエノスアイレスでは、NPOが元々緑のない場所に公園キット(ベンチやレジャーシートなど)を持ち込み、その場所を封鎖してどこでも公園にしてしまう活動をしている。
  • 家の中に公園を持ち込もう!

などがあります。「公園→こうえん」と平仮名に置き換えてゆるりと、スキのある空間としてとらえたり、「皆で持ち寄る」足りない物や考え方を皆で持ち寄って楽しい空間に変えてしまう。「自分×公園」自分の特技・料理やデザインなどをコラボレーションさせる、この3つがキーワードではないかと思います。

岩崎氏:
「東京キャンプ」は都会にある緑の場所をベースとしてワクワク感や自然を感じる場所を作りたいと活動しています。丸の内朝大学での「ピクニックプロデューサークラス」では自分達でやりたいピクニックのスタイルを作ります。アウトドアの中で一番入口が広く、誰でも自然を身近に感じることができます。東京キャンプは自然と人と町をつなぐことをテーマとしていますが、そこに「地方」というキーワードを加え「SOCIAL PICNIC PROJECT」という活動も昨年秋よりスタートさせました。都市空間の中でも緑がある場所は欠かせない場所ですが、そこを守る時、例え規制があったとしても視点を変えるだけで楽しく、面白くできるアイデアはいくらでもあると思います。その辺りをもっと社会に広めていきたいですね。
柿原氏:
「青空の下でウエディングをしよう」と、お金や形式にこだわらずに一番ハッピーな形で結婚式を挙げる方法を提案しています。緑を生活に取り入れられる事例の1つとして、高尾山でのウエディングやふるさとでのアウトドアウエディング(北海道大沼にて)などを行ってきました。使用する公園の管理者やキャンプ場の持ち主に、使用するための新しいルール作りをお願いしたり、地方や島では地域活性のコンテンツとして取り入れていただくこともあります。

「H.O.W」のいいところは、「1、好きな場所でできる、2、人数は希望に合わせて、3、等身大の予算で、4、好きなスタイルで、5、時間はたっぷりある」で式を挙げられることです。

鈴木氏:
活動を始めるきっかけや楽しかったことなどを教えてください。
岩崎氏:
丸の内朝大学の「環境ソーシャルプロデューサークラス」の授業で課題として作ったのがきっかけです。前から自然の中で皆で楽しむ時間が好きだったので、キャンプの楽しさを東京での日常の楽しさの1つとして形にしてみたいと思っていました。授業を行ってみて感じるのは年齢・性別・肩書きを超えた仲の良さが素晴らしいということです。何かを自分達で作ろうと能動的に動いた時、それがとっておきの思い出になる、そんな場所を増やしていきたいと思います。
柿原氏:
2年前にこのプロジェクトを始めた時は、自分がウエディングを考えていた時期でした。挙式にかかる金額に驚き、従来の結婚式のスタイルもしっくりこないことを感じ、海外のウエディングや様々な事例を調べていた時に、ネット検索で「公園でウエディングに呼ばれたので行ってきました」というブログを見つけました。取材をさせていただき、自分達のブログに載せたところ、そういうウエディングをやりたい!という問い合わせが意外と多くきて、そこから広がっていきました。ウエディングって作れるんだという感覚を得られたことや、全く知らない年配の方とウエディングというイベントを通して世代を超えたコミュニケーションができる機会が増えた事がとても嬉しいです。
小野氏:
少し深めている人が1人いるだけでその場の良さが圧倒的に違ってきますね。ハードルが高いのではなく、深めている人にきちんとお願いすれば、参加者側も満足度が上がり、より楽しい時間が過ごせると思います。
鈴木氏:
緑や公園などの身の回りの環境はどれも誰かがルールを決めていて、私達はそれを守るだけなのが現状です。環境に対して「そうじゃないんじゃないの?」とこちらから提案して、能動的にその場所や空間を使うことで自分達も楽しむと、環境もよくなると思います。ポイントは楽しくやるということ。自分で作り出す人、そこに乗っかりたい人、話があったら教えてほしいという人、皆でネットワークを作って新しい関わり方を考えていけるといいと思います。
◆ワールドカフェ
お題:
「100年後の東京は、緑が今の2倍に増えています。それはなぜでしょう?」

〈方法〉
4~5人のグループに別れる。紙とペンを各自用意。
お題について15分話し合ったのち、1人だけ残して席を移り、違うメンバーで15分話し合う。元のメンバーに戻り他のグループではどんな意見が出ていたかを話し合う。最後に各班1つずつ発表し、情報を共有する。

〈ワールドカフェで出た意見〉

  • 使われなくなった道を緑で覆ってしまう。
  • シェア・カーならぬ「シェアホース」。未来の東京は移動手段が馬になっている!?
  • 緑が増えるには種と水が必要。科学が進み、種が入った雨が降ってきて緑は2倍に。
  • 東京は人口が多い、だから人間を緑化させてしまおう!
  • 農家の娘や息子は相続が大変。緑を強制的に残す徴農制度をつくる。
  • 少子化により空き家が増える。そこを解体し緑地にして、エメラルド・ネックレスのよう につないでいくと、緑の中に都市が存在するようになる。
  • 緑地や農地を持っている人を対象にグリーン減税を適応し、緑を残す対策をとる。

面白い奇抜なアイデアから現実的なアイデアまで、発表しきれないくらい沢山のアイデアが出ました。これらのアイデアには「東京のいいところは残していきたい」「緑や環境に興味のない人の意識を変えていきたい」などの参加者の想いもあります。

最後に4人のゲストの方々から一言ずつコメントをいただきました。

鈴木氏:
今日のイベントは1つのきっかけだと思うので、少しずつでも緑や環境に関わっていこうと思ってもらえたら嬉しいです。
小野氏:
一人ひとりの暮らしが社会をつくると思っています。何か気になることがあったら、「×(か ける)自分」(自分だったらどうする?)を考え、何より楽しむことが大事だと思います。楽しいことは続くし、続くことは社会を変えていきます。そうすれば緑も2倍どころか3倍にも増えるのでないでしょうか。
岩崎氏:
皆さんいい笑顔で発表されていて、このようなアイデアを出し合う機会を学校や友達同士でもてたら次に繋げることができるのではないかと思いました。東京キャンプもそうなんですが、ちょっとしたアイデアを実現してみることが新しいヒントやきっかけになることがあります。今日のアイデアを実現するような場があれば参加してみたいと思います。
柿原氏:
日本人は公園や自然などの公共空間を「そっとしておかなければいけない」と考えてしまう傾向があり、それはとても素敵なことだと思うのですが、もっと自分事の延長として考えられるといいと思います。公園などでは「やってはいけないリスト」があって運営されていますが、H.O.Wでは「やっていいことリスト」を増やしていきたいと思っています。
☆このセミナーは、丸の内地球環境新聞でも紹介されました。

http://www.ecozzeria.jp/shimbun/news/2012/01/03/emerald_necklace.html