あの町 この町 みどり探訪

<シリーズ>多摩川沿いの崖線の緑

第2回は立川市にある矢川緑地(矢川緑地保全地域)です。この緑地は立川崖線の崖下から湧き出す湧水が最大の特徴で、一帯が湿地帯になっています。下図の全体図に見られるように、矢川は全体崖線の中間的な位置にあり、崖の段差もだいぶ小さくなりす。多摩川と沿川に生まれた全体の崖線のあらましについては、崖線の緑シリーズその1を参照ください。

多摩川と崖線全般

全体図

立川 矢川緑地

矢川緑地は約2.1ha、JR西国立駅から歩いて10分程度の交通の便の良いところにあります。都の環境局では武蔵野の自然を堪能できるよう、「雑木林のみち」(下記HP)というガイドをつくっていますが、「矢川・青柳コース」(矢川から府中用水を経て谷保の城山へ)もこの一つ。ハイキングの起終点になっています。

http://www.kankyo.metro.tokyo.jp/nature/natural_environment/tokyo/thicket_way/index.html

崖線といっても現場へいくとその面影はなく、かつての崖線の系統を調べると、柴崎の立川公園あたりで矢川に向かう立川崖線と、多摩川沿いに青柳を通ってママ下に向かう青柳崖線に分かれています。(広域図参照) ↓

この屋敷林の行く末はいかに

矢川緑地は立川崖線に沿って位置し、武蔵野台地から吐き出る湧水源にもなっています。 矢川の湧水は緑地内でも湧き出していますが、この上流にもあるようです。矢川緑地説明図をご覧下さい。都市計画道路3・3・16号線の西側に矢川弁財天(写真1)がありますが、その北側の水流を観察すると数十メートル先はフタをかけた水路になっています(写真2)。水源は立川高校周辺という説もあるようですが、はっきりとはわかりません。

この屋敷林の行く末はいかに

湧水が矢川緑地と立川公園を結ぶ一帯の、昔のハケ(古い言葉で崖のこと)からしみ出しているのは間違いないのですが、今ではその崖線自体も町の中に消えてしまいました。目を緑地内に向けてみると、湧水の量はまだ結構あります。自然の仕組みが住宅地できちんと機能していることに感服します。流れも速く、きれいで(写真3)弓から離れた矢のような川であることから、その名がついたといわれる面目はかろうじて保っているようです。

矢川の地形は、今の緑地帯や弁財天の地盤がもとの基準の高さです。西側の道路が過去の湿地を断ち切るようになったため、道路の盛り土の中に管を通し、湧水を流すようにしました。弁財天自体は、もともとは緑地内の湿性植物群のところにあって、後に今のところに引っ越したそうです。この緑地が保全されたきっかけは、この地での都の住宅建設問題が発端のようです。かつて「立川の公害をなくす会」(今はない)らが、豊富な湧水、植生等の資源に気がつき、保護しようと保存運動を推進した結果、昭和52年に都条例による緑地保全地域に指定されたのでした。公害問題が勃発した昭和40年代には全国各地で自然保護や回復運動がしきりに行われ、ここもその歴史の足跡でした。今では多くの人が散策に訪れますが、現代人は過去の摩擦の上に自然の恵みを直接間接に受けていることを忘れてはいけないのだと感じました。

ケンポナシ

写真4

ケンポナシ

写真5

写真4は、緑地説明図のAの方向で、矢川が下流に向け、流れています。写真5はBで、緑地区域から出て国立市のママ下崖線(崖線シリーズ第3回掲載予定)の方向へ向かう状況です。それにしても東京のりっぱな清流です。

緑地内に入ると、流れ沿いのヤナギの大木が根こそぎ倒れていました。倒れ方も見事です(写真6)。ちょうど9月21日、台風15号が関東を襲ったあとの24日に取材したため、この場面に出くわしました。ヤナギは根が浅いのでとても倒れやすい木でもあります。

写真6

矢川ふれあいボランティア

この矢川緑地で保全活動をしているのが、「矢川ふれあいボランティア」です。代表の花房さん、熱心に活動に打ち込んでいる、湊さんに話を伺いました。

◆会の成り立ちは?

平成10年4月に、都の環境局が緑地保全地域のボランティアを一斉に募集し、そこに応募した人達から発足。花房さんは矢川緑地と国立の城山(はてな?1)に応募した。当時は何十人もの参加者がいたが、最終的には地元の人だけが残っている。

◆自然に対しての想い

ここにはかろうじて残された自然がある。この貴重な自然を環境教育や自然とのつきあいの場として情報発信できれば良い。湧水の池には小魚はいるが、よく言われる外来のカメ(はてな?2)はいない。アオダイショウやザリガニ、カエルが少なくなっているようで、生態の変化が懸念される。

写真7 資材小屋兼休憩所

◎ はてな?1 国立の城山(じょうやま) ◎

広域図で描いた青柳崖線は、立川市から国立市に続いていて、この青柳崖線全体の中間あたりの国立市に、城山があります。中世の城跡とされて、一帯1.5haが都の歴史環境保全地域に指定されている。豊かな雑木林に囲まれて、ここでも別のボランティア(谷保の城山ふれあいボランティア)が活躍しているそうです。

◎ はてな?2 外来のカメ ◎

最近、見たことのない、変わった亀を道端で発見!なんてTVで聞きますが、それは「ワニガメ」。すごい顔をしています。飼育していたものを飼いきれなくなって捨ててしまったのでしょう。ほかにもミシシッピアカミミガメ、カミツキガメなどが増えているそうです。

◆活動の内容

基本は月2回、第2、第4土曜日、朝9時~午後3時頃まで。臨時活動もある。コアメンバーは4~5人、通ってくれているメンバーは8人ほど。少数で、仲間意識をもってやっている。主に草刈り、道(遊歩道)の補修整備、外来種の駆除(じゅず玉、セイタカアワダチソウなど)、枯れ枝の除去などを行っている。

◆活動資金

消耗品などは、都から現物給付がある。台風での倒木の処理を都が請け負ってくれるといいが、今は敷地内に山積みにしている状態。本当は木のリサイクルまで考えて欲しい。

写真8 
倒木で輪切りにされた柳これ、どうする?

◆行政との関係

都の事務所とコミュニケーションを定期的にとっている。環境省の委託を受けた機関が、小動物や昆虫の調査、定点録画等をやっていた。結果をこちらに提供してくれれば積極的に日常活動に活かしていきたい。

◆他の団体との交流

年に1回、都の事務所で保全地域のボランティアが集まることがあり、そこで情報交換を行っている。

◆課題

新たな会員の募集は、市報、現地看板等で仲間を求めているがなかなか人が集まらない。多様な世代と一緒に活動できればうれしい。

◎ 取材を終えて ◎
  • ○環境局の指定した保全地域は、矢川のようなボランティアが多く活躍しています。都のホームページによると、指定面積750.7ha、48地域あるうち、少なくとも16地域にこうした団体が現場に入っています。また、企業のCSR活動も見られるようです。しかし、こうした善意に基づく活動が保全したい緑を網羅していないのも事実です。緑が生活の一部にでもならない限り、網羅することは不可能でしょう。一体、誰が緑を支えるべきでしょうか。
  • ○いずれにしても、現場で今、汗を流しているのは、行政が公募したボランティアの方々です。ボランティア活動は行政と対等に位置していることが大事とされますが、相互理解は進んでいるでしょうか。数多くある現場の皆さん、如何ですか?
  • ○緑地保全は、財産の管理、実際の維持管理、情報発信や環境学習の活動、現状モニタリング調査、近隣あるいは利用者対応の各視点で、役割を担い、関係者で情報を共有することが必要と思いました。明確にならなくともどうあるべきかは、各主体が集まり、活発な論議をしたいところです。
  • ○矢川の皆さんは、作業の好きな方達ばかりで、場馴れしている感じがします。現場重視で熱気があり、仲間意識があって素晴らしい。ですが、逆にこれが災いして、仲間としてボランティアをやりたい人が出てくるのか、余計な心配をしています。もし、レベルに応じた仲間づくりのプログラムができたら、会の継続にも期待が持てるのではないかと思いました。